マレーシアでは「ツイニング」や「ADP」のように学士課程の前半をマレーシア国内、後半をアメリカやオーストラリアなど海外の大学で学び学位を得ることができるトランスナショナル教育(TNE)が充実しています。
アドバンスドスタンディングもそのような枠組みのひとつで、学士課程で取得した単位やディプロマなどの資格を利用して別の大学のコースに編入ができるシステムです。
「ツイニング」や「ADP」と「アドバンスドスタンディング」との違いは、ツイニングやADPが「学士課程間での移動や編入」であるのに対し、アドバンスドスタンディングの場合、学士課程間だけではなく、カレッジなどで取得した「ディプロマ資格」を使って大学の学士課程に編入することも可能な点です。
そして編入先は世界ランキングで上位の欧米の大学も含まれます。
この記事では、アドバンスドスタンディングの詳細やメリットのほか、実際に編入できるコースを探すための方法も紹介します。
この記事でわかること
アドバンスドスタンディングの詳細
アドバンスドスタンディングのメリット
アドバンスドスタンディングができるコースを探す方法
この記事がおすすめの人
マレーシアの大学に進学したい人
ディプロマ資格も学位も欲しい人
難関大学の学位が欲しいけれども入学要件が足りない人
ファウンデーションコースを経由しないで大学に入りたい人
アドバンスドスタンディングの種類
アドバンスドスタンディングを利用して他の大学に編入をする場合、大きく分けてふたつの方法があります。
ひとつ目は、大学の学士課程で取得した「単位」を利用して同レベルの別コースに編入する「水平型編入(Horizontal Transfer)」、もうひとつはすでに取得した「ディプロマ」や「アドバンスドディプロマ」などの資格を利用して、より上位の資格取得を目指す「垂直型編入(Vertical Transfer)」になります。
水平型編入と垂直型編入
水平型編入
同レベルのコース間における編入
例:「学士コースA」から「学士コースB」への編入など
垂直型編入
資格レベルが上のコースへの編入
例:ディプロマ取得後の学士コース編入など
アドバンスドスタンディングのメリット
アドバンスドスタンディングの水平型編入と垂直型編入にはそれぞれメリットがあります。
垂直型のアドバンスドスタンディングのメリット
取得したディプロマなどの資格を利用した垂直型のトランスファーには多くのメリットがあります。
順に紹介します。
通常よりも短期間でディプロマと学士の二つの資格が取得できる
例外もありますが、アドバンスドスタンディングではディプロマ資格は学士課程の1年分とみなされることがほとんどです。
そのためディプロマ取得後、アドバンスドスタンディングを利用すると大学の学士コースの2年次に編入することができます。
そうすると、ディプロマ課程2年間+学士課程2年間の合計4年間で「ディプロマ」と、「学士」のふたつの資格を取得することができます。
また、資格の面だけでなくレポート作成を中心に知識や理論を学ぶのに比べて、実技中心で実践的な技能が身に付くディプロマ課程+学士課程で知識と理論も身につけることができるので実社会ですぐに役立つバランスの良い学び方ができるとも言えます。
入学要件の低いディプロマコースから上位大学に編入するチャンスもある
一般的にディプロマコースは高校の成績がGPA2.0、英語もILETS4.0程度と入学要件が低く大学と比べて入学がしやすいです。
そのため、英語力や高校の成績の関係で諦めなくてはならなかったような大学についても、アドバンスドスタンディングを利用することでディプロマ取得後に編入するチャンスが得られます。
ファウンデーションコース経由で大学に入学するよりも出口点が多い
イギリスやオーストラリア系の大学の分校や提携コースで学ぶ場合、ファウンデーションコースの履修を求められる場合があります。
ですが、ファウンデーションコースは特定の大学に入学することができるようにはなっても、トータルで4年間の学習を終えるまでは、いわゆる学歴や資格は何も得られません。
でも、ディプロマコース経由で大学に編入する場合、大学卒業までに必要な期間は4年間とファウンデーションコースを経由した場合と同じで、しかも2年目終了時にはディプロマ資格も得られます。
水平型のアドバンスドスタンディングのメリット
大学間のコース移動である水平型の編入にも多くのメリットがあります。
取得した単位を活かせる
学士課程の途中で編入を決めた場合でも取得した単位を活かすことができるため、大学入学後にコース変更したくなった場合にそれまでに取得した単位を無駄にせず、通常よりも短い期間でコースを終えることができます。
世界ランキングで上位の大学への編入を狙える
在籍している大学よりも序列上位の大学にチャレンジしてみたいといった場合にもアドバンスドスタンディングを利用するメリットがあります。
例を挙げると、マレーシアからオーストラリアの大学への水平型編入の場合、オーストラリアで序列1位、QSの世界大学ランキングでは30位のオーストラリア国立大学(ANU)はヘルプ大学から、世界ランキング33位のメルボルン大学はテイラーズ大学を筆頭にサンウェイ大学、ヘルプ大学、APU、など日本人が多く通う大学のコースからのアドバンスドスタンディングによる編入を受け付けています。
ちなみに、メルボルン大学もオーストラリア国立大学も世界大学ランキングでは東大と京大の間のレベルと、とても高い評価を得ている大学となっています。
編入先コースの選択肢が多い
学士課程間の編入による水平型のアドバンスドスタンディングの場合、ディプロマ取得後の垂直型アドバンスドスタンディングと比べて編入できるコース種類が多いです。
そのため、垂直型のアドバンスドスタンディングに比べると、「編入できるコースから選ぶ」というよりは、「自分が専攻したい分野から」コースを選ぶことができます。
アドバンスドスタンディングの例
問い合わせベースが多いアドバンスドスタンディングですが、英国などと比べてオーストラリアの大学はアドバンスドスタンディングを利用した編入が可能なカレッジや大学を公開している大学が多いです。
成績要件などにより認められる単位数はケースバイケースではあるのですが、いくつか実例を挙げてみたいと思います。
メルボルン大学(The University of Melbourne)
メルボルン大学はすべてのコースにおいてアドバンスドスタンディングを利用した編入が可能になっています。
メルボルン大学の編入コース例
以下の表は、マレーシアの大学からアドバンスドスタンディングを利用して編入できるメルボルン大学のコース例になります。
学士課程間の水平型の編入はもちろんディプロマ経由の垂直型の編入も受けつけていますね。
編入元大学 | 編入元コース | 編入先コース |
---|---|---|
Taylor’s University | Diploma in Communication | Bachelor of Arts |
Taylor’s University | Diploma in Construction Management | Bachelor of Environments |
University of Malaya | Introduction to Financial Management and Accounting | Bachelor of Commerce |
UCSI University | Bachelor of Arts (Hons) Psychology | Bachelor of Arts |
Universiti Malaysia Sabah | Basic Chemistry | Bachelor of Science |
アドバンスドスタンディングでメルボルン大学に編入できるコースの探し方
メルボルン大学に編入できるコースや免除される単位などについては、Credit calculatorで調べることができます。
免除される単位数は成績要件などの関連から、あくまでも目安として考える必要はあるのですが、メルボルン大学に編入可能な教育機関やコースのリサーチにも使うことができます。
アドバンスドスタンディング経由でメルボルン大学に編入したい場合はぜひ活用してください。
なお、操作方法がわからない方は、以下をクリックすると表示される手順を参考にしてください。
Credit Calculatorの使い方を見る
Credit Calculatorの「Country」からマレーシアを選び、「Next」をクリックします。
教育機関を選ぶ画面になるので「Institution」からマレーシア国内の大学を選び「Next」をクリックします。ここではテイラーズ大学を選びます。
メルボルン大学に編入できるテイラーズ大学のコースが表示されています。
次はメルボルン大学のどの学部に編入できるのかを調べるために興味があるコースを選び「Next」をクリックします。
メルボルン大学で編入が可能なコースが選べる状態になっています。
なお、今回は編入可能なコースは一つだけですが、複数のコースが選べる場合もあります。
次にどのくらいの単位が免除されるのかを知りたいので、編入先コースを選び「Next」をクリックします。
テイラーズ大学の「Diploma in Architectural Technology」からメルボルン大学の「Bachelor of Environments」に編入した場合に免除される単位や成績要件などの詳細が表示されました。
この組み合わせの場合、最短1年でメルボルン大学側のコースを終えることができるようですね。
ちなみにメルボルン大学狙いの場合、テイラーズ大学は編入対象となっているコースが多いので検討してみると良いかもしれません。
クイーンズランド大学(The university of Queensland)
クイーンズランド大学も編入が可能なコースや免除される単位などの詳細を公開しています。
以下編入可能なコースの例になりますが、メルボルン大学と同様に、ディプロマからの垂直型、学士コース間の水平型ともに選択可能になっています。
編入元大学名 | 編入元コース名 | 編入先コース名 |
---|---|---|
HELP University College | Diploma in Information Technology (Diploma in Information Technology) | Bachelor of Information Technology (BInfTech) |
DISTED College, Malaysia | Diploma in Computer Science (Diploma in Computer Science) | Bachelor of Information Technology (BInfTech) |
DISTED College, Malaysia | Diploma in Business Information Technology (Diploma in Business IT) | Bachelor of Information Technology (BInfTech) |
KDU University College | Diploma in Games Technology (Diploma Games Technology) | Bachelor of Information Technology (BInfTech) |
Taylor’s University | Bachelor of Biomedical Science (Hons) (First 2 years) | #16 (1 year) of Bachelor of Food Technology (BFoodTech) |
ちなみにクイーンズランド大学はQS世界大学ランキングで50位と、東工大(55位)よりもやや上位の評価を受けている大学となります。
アドバンスドスタンディングでクイーンズランド大学に編入できるコースの探し方
メルボルン大学同様、クイーンズランド大学もCheck credit eligibilityの credit precedent databaseで編入できるコースを検索できるのでこちらもぜひ活用してください。
なお、操作方法がわからない場合は以下をクリックすると詳細が表示されるので参考にしてください。
クイーンズランド大のコースの探し方を見る
クイーンズランド大学の「Check credit eligibility」ページの「 credit precedent database」をクリックします。
表示された画面の「Instisution」にマレーシアのカレッジや大学名を入力し「Search」をクリックします。
検索した教育機関からクイーンズランド大学に編入可能なコースが表示されます。
免除される単位などの詳細を確認したい場合は「View Full Details」をクリックします。
編入元と編入先のコース名や免除される単位などの詳細が表示されました。
オーストラリア国立大学(The Australian National University)
コースが限られますが、オーストラリア国立大学(ANU)もHELP大学からアドバンスドスタンディングを利用した編入が可能です。(ANU:International Partnership and Advanced Standing)
HELP大学からANUへの編入の場合、1年目をHELP大学のバチェラーコース、2〜3年次をANUで学ぶという形になります。
ヘルプ大学のビジネス系学部はメルボルン大学やクイーンズランド大学などにも編入可能なので、ビジネス系の学部を考えている人にはおすすめです。
編入できるコースが探せるツール(リンク)一覧
これまでに紹介した3つの大学同様、そのほかの大学でもディプロマ資格や単位を利用して編入できるコースを探すことができます。
以下はオーストラリア国内の上位大学に編入できるコースを検索できるページのリンク一覧になります。
アドバンスドスタンディングを利用したオーストラリアの大学への編入に興味を持った場合はぜひ活用してください。
ツール利用における注意点
オーストラリアはいわゆる教育機関で得た「Formal Study」による単位や資格だけではなく、「Non-formal learning」としてボランティアや職業経験なども単位免除の対象になります。
そのため、マレーシアの教育機関からの編入を目的としてコースを検索する際にどちらかを選択する必要がある場合は「Formal Study」を選んでください。
また、同一大学内の編入ではなくほかの教育機関からの編入になるので、必要であれば「Other Institution」、または「International」を選択してください。
アドバンスドスタンディングの注意点
アドバンスドスタンディングを利用したルートで学士課程への編入を考えている場合、注意しなければならないのが、成績要件などによっては100%編入ができるわけではないという点です。
また、アドバンスドスタンディングの編入元の教育機関は入れ変わる場合もあります。
そのため、編入先コースはひとつだけではなくいくつかの大学のコースを候補にしておくことをおすすめします。
まとめ
アドバンスドスタンディングは、成績などの条件も含めてケースバイケースでの対応になるため、確実に希望する大学を卒業することができるかどうかと言う点については不確実性が残ります。
けれども、
ディプロマコースで学べる実践的な技能もアカデミックな知識も身につけたい
大学出願の時期に英語や成績要件が希望するレベルの大学の基準に届かなかった
大学入学後、もっとレベルの高い大学で学びたくなった
ファウンデーションコース経由で大学に進学したくない
といったケースでは利用価値が高く、検討する価値があります。
いずれにしても、アドバンスドスタンディングを利用したルートで学位を取得したい場合、編入したい大学が受けつけている教育機関やコースなどの事前リサーチがとても重要になります。
最も確実なのは各教育機関から提供されている検索ツールを利用や、編入したい大学に直接問い合わせることになります。
少しハードルが高いように感じるかもしれないのですが、海外大学を目指す場合には良い経験にもなるのでぜひチャレンジしてみてください。
もし直接大学に問い合わせる際は、「Advanced standing」、または「Recognition for prior learning (RPL)」といった文言を含めるとスムーズに伝えることができるでしょう。
そうは言っても、やっぱり自分だけで情報収集をするのは不安といった場合は留学エージェントの利用もおすすめです。
留学エージェントが相性もあるので、いくつか相談し良さそうなを選ぶことをおすすめします。
以下はカウンセリングが無料のエージェントになるのでよろしければお役立てください。
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