海外大学への進学を考えた際に、THE World University Rankings(タイムズ社)や QS World University Ranking(クアクアレリシモンズ社)を参考にする人は多いのではないでしょうか?
でも、このランキングがどのようにして割り出されているのかを理解した上で利用している人は少ないのではないかと思います。
世界大学ランキングは、THE 世界大学ランキング、QS 世界大学ランキングともに、いろいろな指標を組みあわせて順位を算出しています。
そのため、QS世界大学ランキングやTHE世界大学ランキングは、あくまでもタイムス社やQS社の基準によるランキングということになり、上位であるからと言って必ずしも個々の学生のニーズに合致しているとは限りません。
そのため総合ランキングでは順位が低いにもかかわらず、分野において世界一といったような大学を調べることができます。
この記事では、QS世界大学ランキングとTHE世界大学ランキングの評価指標の詳細と世界ランキングのリサーチ方法を、評価指標や専攻分野別の調べ方と合わせて紹介しています。
この記事でわかること
「QS世界大学ランキング」と「THE世界大学ランキング」で順位算出に使われる評価指標と手法
「QS世界大学ランキング」と「THE世界大学ランキング」の評価指標別の世界大学ランキングの調べ方
「「QS世界大学ランキング」と「THE世界大学ランキング」の学術分野別の世界大学ランキングの調べ方
この記事がおすすめの人
海外大学に進学したい人
世界大学ランキングの順位算出方法を知りたい人
特に、海外大学進学を目指す人には知っておいてほしいことばかりなので、ぜひ読み進めてください。
東大の世界ランキングが低い謎もとけるよ
QS世界大学ランキングとTHE世界大学ランキングの評価指標
QS世界大学ランキングとTHE世界大学ランキングを比べると、同じ大学でも順位が違うことに気づきます。
例えば、Times社による2023年度の日本国内大学ランキングでは、1位は東京大学ではなく東北大学、2位に東大、3位大阪大学と続き、京都大学は大阪大学以下で、日本の私立トップである早慶は10以内にすらランクインしていません。
一方、QS社による2023年度の日本国内の大学ランキングの場合、東大、京大、東工大と続き早慶もトップ10にランクインしており、Times社の大学ランキングとはだいぶ異なります。
この理由は、タイムス社のTHE世界大学ランキングとQS社のQS世界大学ランキングではランキングを割り出す際に使われる評価指標や手法が異なるためです。
それでは、具体的にどんな指標や手法を使ってランキングを算出しているかを見てみましょう。
まず、タイムス社の世界大学ランキングの評価指標ですが、「学習環境」、「論文の引用」、「リサーチ力」にそれぞれ30%ずつ重みをつけています。
タイムス社の評価指標を見る
指標 | 割合 | 手法 |
---|---|---|
引用 Citations |
30% | 研究の影響力 過去6年間の引用回数を正規化 |
産業所得 Industry income |
2.5% | 産業界・商業界からの研究収入/学術職員数 |
教育面 Teaching |
30% | 学習環境の評価 |
調査 Reputation survey |
(15%) | 4万件以上のデータを用いた教育評価調査 |
職員と学生の割合 Staff-to-student ratio |
(4.5%) | 教員1人当たりの生徒数 |
博士号取得者比率 Doctorate-to- bachelor’s ratio |
(2.25%) | 博士号授与数/学部学位授与数 |
博士号取得者対 教職員数比率 Doctorates-awarded-to- academic staff ratio |
(6%) | 博士号取得者数/教員数 |
大学の収入 Institutional income |
(2.25%) | 機関収入/アカデミックスタッフの購買力平価 |
研究 Research |
30% | 研究の量、収入、評判 |
研究機関の評価調査 Reputation Survey |
(18%) | 研究機関の評価調査 過去2年間のデータをもとに算出 |
研究収入 Research income |
(6%) | 研究収入/学術職員数 |
研究生産性 Research productivity |
(6%) | 論文数/学術職員数 |
国際的な視野 International outlook |
7.5% | 国際的な職員、学生、研究 |
留学生の割合 Proportion of international students |
(2.5%) | 留学生数/学生数 |
外国人スタッフの割合 Proportion of international staff |
(2.5%) | 外国籍の学術職員数/学術職員数 |
国際的な協力関係 International collaboration |
(2.5%) | 外国籍の共著者との論文数/論文数合計 |
一方、QS社のランキングの場合は、13万人以上の世界中の高等教育関係者の意見を集約した「学術的評価」に、40%の重みをつけています。
QS社の評価指標を見る
指標 | 割合 | 手法 |
---|---|---|
学術的評価 Academic Reputation |
40% | 13万をこえる高等教育機関の専門家に対して調査 |
雇用主による評価 Employer Reputation |
10% | 世界各国の雇用主に対して調査。 |
教員と学生の比率 Faculty Student Ratio |
20% | 政府や教育機関の数値による教員数/学生数。 |
論文の被引用数比率 Citations per Faculty |
20% | 5年間分の論文が、6年間で引用された比率。 |
外国籍教職員比率 International Faculty Ratio |
5% | 3ヶ月以上学術的な教育や研究に携わった外国籍を持つ教職員の数が、教職員全体に占める割合。 |
外国籍の学生の比率 International Student Ratio |
5% | 3ヶ月以上滞在する外国籍の学生の総数が、学部生および大学院生全体の総数に対して占める割合。 |
国際研究ネットワーク International Research Network |
0%* | 国際的な研究ネットワークに対する評価。 |
就職状況 Employment Outcomes |
0%* | 卒業生の就職率と同窓生の影響度。 |
参照:QS World University Rankings methodology: Using rankings to start your university search
THE世界大学ランキングよりもQS世界大学ランキングの順位の方が日本国内で認識されている、いわゆる偏差値型のランキングに近いのは、学術分野での評価割合が40%とTimes社の30%と比べてやや高めなのも理由のひとつかもしれませんね。
なお、ランキングの評価指標や割合は年度によっても変わります。
以下はQS世界大学ランキングの2024年度以降の評価基準ですが、新たに「持続可能性」などの指標が追加され、学術的な評価の割合が40%から30%にアップデートされています。
QS社の評価指標2024年〜
指標 | 割合 | 手法 |
---|---|---|
学術的評価 Academic Reputation |
30% | 13万をこえる高等教育機関の専門家に対して調査 |
雇用主による評価 Employer Reputation |
15% | 世界各国の雇用主に対して調査。 |
教員と学生の比率 Faculty Student Ratio |
10% | 政府や教育機関の数値による教員数/学生数。 |
論文の被引用数比率 Citations per Faculty |
20% | 5年間分の論文が、6年間で引用された比率。 |
外国籍教職員比率 International Faculty Ratio |
5% | 3ヶ月以上学術的な教育や研究に携わった外国籍を持つ教職員の数が、教職員全体に占める割合。 |
外国籍の学生の比率 International Student Ratio |
5% | 3ヶ月以上滞在する外国籍の学生の総数が、学部生および大学院生全体の総数に対して占める割合。 |
国際研究ネットワーク International Research Network |
5% | 国際的な研究ネットワークに対する評価。 |
就職状況 Employment Outcomes |
5% | 卒業生の就職率と同窓生の影響度。 |
持続可能性 Sustainability |
5% |
指標が変わるとランキングも変動するので、大学側に目立った変化はなくても順位の変動は起こりうるという認識を持っておくと良いでしょう。
指標別のランキングについて
QS世界大学ランキングやTHE世界大学ランキングは、独自の指標を複合的に用いて大学を評価しているため、求められる条件をバランスよく満たしていない場合、たとえ学術分野での評価が高くても総合的な大学ランキングは低くなる傾向があります。
例として、QS社の2023年度の世界大学ランキングで東京大学は世界23位となっています。
ところが、評価指標を「学術的な評価」で並び替えてみると世界7位と、16ランクも順位が上がります。
学術的な評価が世界第7位にも関わらず、総合ランキングで23位になってしまう理由を探ってみると、東大の場合、「International Faculty Ratio(外国人教員の割合)」や「International Student Ratio(留学生の割合)」が低いことがわかります。
このように、指標別の評価を調べるとその大学が強い面や弱い面を見つけることが可能になるので、自分が気になる評価指標の情報については調べておくことをおすすめします。
指標別順位の調べ方
なお、具体的な指標別ランキングの調べ方は以下に詳しく解説しています。
画像つきで少し長くなるので、興味がある方はクリックをして詳細を表示させてくださいね。
QS社の指標別順位を見る方法
1.QS Top Universitiesのサイトにアクセスし、「RANKINGS」メニューの「QS World University Rankings」をクリックします。
2.総合ランキングのページが開くので、「Ranking Indicators」をクリックします。
3.ランキングの見出し上部に評価指標が表示されます。
4.試しに「Academic Reputation(学術評価)」の指標をクリックしてみます。
5.総合ランキング5位だったハーバード大学は1位になり、ユニバーシティカレッジロンドンやインペリアルカレッジロンドンと変わって東大やUCBが上位にランクインされています。
画面上に表示されている指標以外にも、「>」のアイコンをクリックすると留学生比率や論文の引用なども選ぶことが可能なのでいろいろ調べてみることをおすすめします。
TIMES社の指標別順位を見る方法
1.Times Higer Educationのサイトにアクセスします。
2.画面上部、または中央部の「World University Rankings」をクリックします。
3.ランキング一覧ページの「Show me universityes best for」のドロップダウンから表示させたい指標を選びます。
4.選択した指標で並べ替えられた順位が表示されます。
5.なお、指標の選択は画面上部のドロップダウンリストの他にも「SCORES」タブで指標をクリックすることでも可能です。
また、評価指標の他にも、地域や学術分野別で調べることもできるのでいろいろ試してみてください。
学術分野別のランキング
QS社やタイムス社の大学ランキングには、学術分野別の評価も掲載されています。
大学で学ぶ内容よりも、ランキングが上位の、知名度が高い大学に進学することを重視している場合はそれほど気にすることはないのかもしれませんが、学びたいことがはっきりと決まっている場合には学術分野別のランキングを調べることはとても重要です。
なぜかと言うと、総合ランキングでは上位ではないにも関わらず、ある分野において高い評価を受けている大学が存在するためです。
こういった大学は珍しくはないのですが、一例として英国のロンドン大学を構成するRoyal Veterinary College(王立獣医科大学)を挙げてみたいと思います。
英国王立獣医科大学は単科大学で、2023年度のQS世界大学ランキングにおいて600位以下という評価なのですが、獣医学分野別のランキングを見てみると世界1位の大学です。
英国王立獣医科大学の詳細ページを見ても、長年に渡って順位は安定しており、かつ論文の引用や学術分野などの評価もとても高い大学だということがわかります。
日本国内の大学であればこのレベルの情報を見逃すことはないのですが、海外大学の事情に通じていない場合、学術分野別の評価も調べておかないと、大学選びで取りこぼしが発生しかねません。
進みたい専攻が決まっている場合は、学術分野別の評価もぜひチェックするようにしましょう。
学術分野別ランキングを調べる方法
QS世界大学ランキング、THE世界大学ランキングの学術分野別順位を調べる方法は以下で解説しています。
クリックをすると画像付きの手順が表示されるのでぜひ利用してみてください。
QS社の学術分野順位を見る方法
1.QS Top Universitiesのサイトにアクセスし、「RANKINGS」メニューの「QS World University Rankings by Subjest」をクリックします。
2.分野別ランキングのランディングページが表示されるのですが、ここからだとピックアップされている分野しか選択することができないので、一覧ページにアクセスしていきます。
一番上に表示されている分野の「Viel Full List」をクリックします。
3.学術分野別のランキング一覧ページが表示されました。
4.「Subject」のドロップダウンリストを開くと、教科別のランキングが表示されます。
5.また、学術分野別のランキングでも、「Full View」をクリックすると指標を変えて順位を確認することが可能になります。
年度や地域、国も選択できるので、進学したい国が決まっている場合は絞り込み条件として設定してください。
タイムス社の学術分野順位を見る方法
1.Times Higer Educationのサイトにアクセスして、「Rankings」をクリックします。
2.「World University Rankings」をクリックします。
3.大学ランキング一覧が表示されるので、「any subject」のドロップダウンリストで調べたい分野を選択します。ここではスポーツサイエンスを選択してみます。
4.スポーツサイエンス分野の順位が表示されています。この手順で、他の学術分野の順位を調べることができます。
5.また、過去のランキングも調べることができるので併せて利用してみてください。
大学の詳細ページも確認しておこう
Times社、QS社ともにランキング以外にも大学別の詳細情報も提供しています。
大学別の詳細ページには、ランキングの推移のほか、学部や学費の目安、卒業後に期待できる収入など多くの情報が掲載されているのでこちらも併せて利用することをおすすめします。
Times社の大学別詳細ページの例
以下はTimes社の大学別の詳細ページの例になります。
学費や提供されている学部の他にも、ランキングの推移、10年後に見込める収入などが掲載されています。
QS社の大学別ページに比べると視覚的にも工夫がされており情報量も多めなのでぜひ参考にしてみてください。
QS社の大学別詳細ページの例
QS社の詳細ページも大学の概要のほか、順位の推移、指標毎の評価などが掲載されています。
すっきりとしたつくりなので、概要を掴みたい人にはおすすめです。
指標や分野別の大学ランキングの活用は後悔しない大学選びにつながる
総合ランキングで上位の大学は、就職や卒業生のネットワークなど受けられる恩恵も大きいです。
一方で学びたい分野がはっきりしている場合、いわゆる総合ランキングでは上位ではなくてもある分野に秀でている大学で学ぶことは、大学の満足度と卒業後のキャリアにつながります。
世界ランキング上位のトップスクールに行きたい
興味があることを高いレベルで深く学びたい
ランキングと教育内容のバランスが良い大学に行きたい
といったように、自分が望むものが何かを見極めて後悔のない大学選びをするようにしましょう。
例を挙げると、THE世界大学ランキングで東大と同等の順位にランクインしているカナダの「University of British Columbia」の卒業率は8割に満ちていません。
なんとなく行けそうな大学ではなく「得たいものが得られるか」を基準にした大学選びを心掛けるようにすると、卒業までのモチベーションを維持することができるので、ぜひ専攻や指標別の大学ランキングも活用してくださいね。
また、学校選びに悩んだ時は海外大学進学において豊富な知識と経験を持つ留学エージェントの利用もおすすめです。
海外大学の情報は基本的に英語になり、その範囲も世界となるため自分一人で情報を集めるのはあまり効率的ではありません。
留学エージェントは数多く存在するのですが、以下のエージェントでは無料相談ができるので、学校選びや留学に関して知りたいことがあればぜひご活用ください。
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